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執筆者の写真土屋康平

ネガポジ日記 #5 「Love know あいち」

原宿。

今では竹下通りと呼ばれる、年がら年中ハロウィンのような仮装が許される若者の街。


インスタ映えの商品が立ち並び、そこに人が群がる。


東京の人たちは行列に並ぶことが好きだ。レインボーの綿アメ、伸びるチーズドック、テレビで有名になったラジカセおばさん。


すべてのものが許される街、それが原宿だ。



そんな街に、我が地元の愛知県の友達と遊びに行ってきた。



友人の2人は東京に圧倒されていた。

1人は後にこう語る。

「愛知はしょっぱい、空が広くて、駅に人は少なくて、電車の乗り降りが楽で、道が広くて、ポスターが少なくて、仮装がへぼくて、エトセトラエトセトラ」と。


それのなにが悪いのだろう。




兎にも角にも、わざわざ東京まで遊びに来てくれた友をもてなすべく、自分が知りうる東京という東京を彼らに浴びせかけたわけだ。



「ここが、原宿で、そこが竹下通り。え?まぁこのくらいの人混みよいつも、まぁそんなに来ることもないけどさ、あっ、そこのクレープが有名なのよ、あとここ、最近話題になってるアレよ、アレ」





ダサい。


自分が知ってる風に気取っていること自体がダサかった。



本当は竹下通りなんて全然知らない。


人混みが怖い。


少し前、大学の友人が漫才を原宿のライブハウスでやるというので観に行ったことがあった。


1人で通る竹下通りは、1人ディズニーと同じくらいキツかった。1人ディズニーなんてしたことないけど、きっとあれはそれだ。



やはり心は未だに田舎者。3人で人酔いし、竹下通りをすぐに抜けた。


今では竹下通りのことを、毒の沼地と呼んでいる。



通りを抜けて、信号を渡り人気の少ない通りに進みようやく我々は落ち着いた。


ここらで昼食を取ろうとなった。


いや、ここは原宿。言い直さねば。


ここらでLunchを取ろう。



1人が雑誌のポパイを取り出した。

観光地でるるぶを広げるような恥ずかしさを感じながらも、その1人がいうオシャレなカレー屋さんとやらを目指し歩いた。



10分後、私たちは安くて量が多いサンライズという店で、肉やパスタやオムライスを頬張っいた。


オシャレなカレー屋というのはなぜ値段が高く量が少ないのだろう。そもそもなぜ日曜が定休日なのだろう。一番稼ぎどきではないのか。



腹も満たされ、HPが回復したところで、我々は何故かまた毒の沼地に戻っていった。



ランチの次はスイーツが食べたくなるのが年頃の男の子という者である。


未だにポパイが手から離れない友は行きたいカフェをグーグル先生に聞き、歩いて目指した。


いつの間には一行は、表参道に来てしまっていたのだ。



オシャレの代名詞。田舎の対義語。都会の人すら憧れる響き。




表参道。




でかいリュックを背負った男たち。


側から見れば一目瞭然の田舎者。


そんな自分達に表参道は大きすぎる壁。



3人で手と手を取り合い、一歩一歩進んで行く。



そびえ立つ建物がどれも綺麗だ。


Appleの店はガラス張りで、中はシンプルながらもオシャレ。

散歩中の犬は我々より高いカット代を支払われているような毛並みである。



目的の店を目指す。

街で聞こえる笑い声は全て自分達に向けたものではないのかと疑心暗鬼になりながらも、頑張って目指して行く。



どうにかこうにか、たどり着けた。

だどり着いたその店もまたオシャレだ。

また働いてる店員さんもオシャレだ。

もしも人の顔面に点数がつく世界だとしたら確実に80点以上を揃えてきてる。



でもよく頑張った。

本当に頑張った。

よく愛知の田舎町で出会い育った僕らがこんな店にたどり着けた。

嬉しかった。

もう我慢はしなくていい。



猥談をして、馬鹿笑いをして、周りにひとしきり迷惑をかけて、逃げるように帰った。


そのまま2人とは、駅で別れた。

2人はまた地元に帰って行った。


こっちは1人で自分の家に帰る。

誰も待ってない自分の家。

昨日まで2人がいた家に。

少しだけ寂しいから。

また来てね。









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